北の大地には何があるのか?

後書きめいたものを書いてみよう。2年連続で北海道を走った。03年には最北端と知床岬を極めた。今回は最南端と最東端を走った。合わせれば札幌、函館、大沼方面以外の道はだいたい走ったことになる。ではもう北海道に飽きてしまったか、そんなことはない。

これが単なる観光地であれば、一度行った所にはもう行かなくてもいいかなあと思うだろう。特に北海道は20年前とほとんど変わらない所があるくらいなので、毎年来ても周りの風景は変わっていない。

私はこの変わらないところに惹かれるのかもしれない。19歳で始めて北海道を訪れてから、学生時代は毎年、北海道を歩いた。ユースホステルが大人気の時代で、北海道にはカニ族と学生の旅行者であふれかえっていた。私はアメリカに被れて、バックパッカーを気取ってジャンスポーツをコピーしたような国産のフレームザックを背負って、青函連絡船に乗って函館に着いた。

旅行の期間は1ヶ月。部活が始まるまで粘れるだけ北海道で粘ろうと考えていた。ポケットには北海道ワイド周遊券を。各駅停車と急行列車を乗り継いで、北海道の旅は始まった。テントは持たずに野宿しながら毎日米を研いで自炊した。キャンプ場でよくおかずをもらった。

最初はバスに乗っていたが、ヒッチハイクも覚えた。暴走族のセリカに載せてもらって旭川から層雲峡を走った。コーナーのことは覚えているが、どんな奇岩貴石があったのか全く分からなかった。テキ屋のワンボックスに乗って知床五湖を回った。商売もののトウモロコシを沢山食べさせてもらった。札幌ではヒッチハイクした車のドライバーの方が自宅に泊めてくれた。ひさしぶりに布団で寝た。

沖縄で知り合った女性二人連れの旅行者と、彼女たちの故郷である北海道で再会した。小樽商科大学の学生と友だちになって、彼のRZ-350にタンデムして二人乗りでハングオンした。札幌の靴屋の女の子と北大のキャンパスでデートした。

いろんなことがあった。東京での大学生活より、北海道のことが鮮明に思い出される。とにかくバックパッカーにとって北海道は限りなく広かった。1ヶ月かかっても全部回ることはとうてい不可能だった。大雪山には行ったが、富良野に行ったことはなかった。知床半島まで来たらほんとに東京が異国に思えた。

それがドゥカティに乗って走ると、北海道は驚くほど狭いのだ。網走湖から1日で苫小牧まで走れるのだ。広大な北の大地が、自分のうちの庭のように思える。どこに何があるかも分かっているので、観光ガイドを見る必要もない。もちろん、自分の知らない名所旧跡がまだまだたくさんあるのだろうが、それを積極的に探して、見に行こうという気にはなれない。

まず、富良野でまったりして、どうするか考えている間に3日ぐらい経ってしまったりする。カレンダーもメールも気にしなくていい生活。雨が降ったら、テントの中でゴロゴロするか、晴れている地方を探してドカのエンジンをかけるか。無計画でいられるのがいい。行くところがなければ、網走湖の夕陽の家まで走ればいい。ここが満員になる心配はまずない。北海道のブームはとうに去ってしまい、いつでも最高の夕陽が見られる窓際のテーブルが空いているのだ。

ここが私にとっての隠れ家なのかもしれない。都心にないので、そう簡単に行けないが、神威岬と同じくらい変わらない場所に思える。といっても始めて行ったのはたったの2年前であるが。

もちろん、日本とは思えないような雄大な自然にも出会える。屈斜路湖の湖畔のキャンプ場にテントを張って、夕方になってから湖につながっている露天風呂に入るのは最高だ。食べ物も美味しい。ユニークな旅行者も多い。まあ、手あかの付いた表現で言えば、ふところが深いのだ。しかも日本とは思えなくても、日本なので日本語が使える。海外まで行ってしまうと、英語で話さなきゃいけないし、道路標識もメニューも時刻表も全部英語または外国語である。これが結構、面倒なのである。

北海道なら、大人気の観光地に行かない限り、他の旅行者とかぶったり、うるさかったり、幻滅したする心配はない。なんせ広いから。最北端の碑だって、早朝に行けば誰もいない。日本にいながら海外にいる気分が味わえる。ここはちょっとカナダみたいだなとか。

ぐだぐだと書いてきたが、北海道は鉄道より道路の方が発達しているのでツーリングには最高だと思う。制限速度を守って走っても充分距離は稼げるし、周りの景色も目を楽しませてくれる。未舗装路もあるし、ワイィンディングロードもあるし、海沿いも山の中も走れるし、キャンプ場もあるし、ライダースハウスだってある。民宿もペンションもホテルも高級旅館もあるから、好きなところに泊まれるし、食堂もピンキリで予算に合わせて、自炊から舟盛りまで楽しめる。

ということで、モンスター乗りは、一度は北海道を走ってみよう! ハーレーやBMWだけに北海道を楽しませていいのか! 荷物が積めないならライダースハウスに泊まろう。まあ、あせらなくてもいいよ。北海道はいつまでも変わらずにそこにあるから。

カビが生えたポジフィルムの中から、まとものものを選んでフィルムスキャナーで読み込んでみた。一人旅なので、基本的にはセルフタイマーで撮影している。バス停の写真は道路にカメラを置いて24mmで撮った。神威岬の写真は北海道で知り合った旅人にシャッターを押してもらった。ここはほんとうに変わらない。今でも同じポーズで撮影したいのだが、シャッターを押してくれる人が見つからなかった。