我々はなぜモンスターに乗るのか。
空冷2バルブのLツインエンジンだから。
ネイキッドでアップハンドルだから。
94年モデルに乗るライダーなら、キャブレターのない
モンスターは認めないかもしれない。
01年のインジェクションモデル乗る俺は、水冷4バルブを積んだS4を
モンスターとは呼びたくない。
先日、かなりチューンされた900SSに乗る機会があった。
エンジンは940ccにボアアップされ、サスは前後オーリンズ。
ブレーキはブレンボレーシング。クラッチはサーフレックス。
ホイールはマグネシウム。タイヤはミシュラン、パイロット・レース。
バックトルクリミッター付きのクラッチをそっとつなぎ、
アクセルをガバッと開けるとグゥウォーという吸気音と共にダウンドラフトタイプの
キャブレターがエアを吸い込み、テルミの排気音がボボボッという音から、甲高い連続音に変わる。
速い、息もつかせぬ加速感。
コーナー手前でフロントブレークをククッと絞り込むと、ある瞬間を境に急激に減速が始まる。
ステップに加重がかかる。シングルシートに尻を押しつけながら、卵を持つようにそっとハンドルを握る。
カーボン製のクリップオンハンドルがコーナーをトレースしていく。
ブレーキをリリースすると同時に、900SSは地面に吸いつくようにバンクする。
ハンドは滑らかに弧を描き、アクセルをググッと開けるとコーナーの出口めざし、
マシンは解き放たれた獣のように加速する。スタックのタコメーターのランプが4個点灯した。
モンスターよりも、確実に安定して速くコーナーを走ることができる。
しかし、このマシンのオーナーは、996モノポストを借り箱根ターンパイクを半周して一言。
「このエンジン凄い。水冷のドカは別物だね。いじってある俺の900SSより全然速い」
ドカに絶対的な速さを求めるなら、996である。
国産ならオーバー300kmのマシンまで現れた。
速さは相対的なものなのか。
東名、海老名SAで一機の戦闘機を見た。
F86Fセイバー。ボディはアルミのリベット止めだ。
翼のない戦闘機。タンクにはUSエアフォースのデカールがあった。
ベースはビューエルS1ライトニング。
スリムでセクシーだ。
我々はドカのエンジンをかけ、SAを出ようとしていた。
戦闘機のオーナーがやってきた。スリムで長身な男は、
素早くヘルメットを被るとエンジンをかけた。
900SSを先頭にドカが走り出した。
追い越し車線に出て加速、メーターの針が180kmに近づく。
バックミラーに銀色の塊が踊る。
刹那、戦闘機は爆音と共に我々を抜き去り、
輝く点となって視界から消えていった。
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