二輪魂

遙かなる高みを目指し、もがき苦しみながら
Monsterを走らせ続ける男の挽歌

第十四輪 10万kmの先

□コメント
99800kmのオドメーターのオフ車ライダーとの衝撃的出会い
本ツリーにてGON氏の経歴が判明し、BBS騒然!いやはやびっくりしたわ
13話14話ときて、「あ、なるほど、オールランドに感動するような話に
人気があるのだと気づく。(あまりマニアな話はウケないようだ)
この後、3本に2本は「感動」や「考えるさせられる」ことを目的にし、メッ
セージ性を濃くして書こうと思った。

No.13の二輪魂が好評?だったので今回も私がツーリング中に出会ったインパクトのある
ライダーについて書こうと思いました。(力入れたコラムなのでこれも別スレッド勘弁のほど)

□本文
26才の夏。紀伊半島1周のツーリングを経て、大阪から九州へ向かうフェリー。
ぶらぶらと船内を歩き、車が積んである区画へたどり着いた。
自分のバイク状態でも確かめようとバイクを固定してある場所に行く。
バイクは10台もなかったが、ふと気になるバイクが目に入った。赤のHONDA XL250。
なんの変哲もない、どこにでも見かけるオフロード車の定番のバイクである。
しかしそのXLからはオーラが出ていた。

具体的に何がオーラなんてわからないが、とにかく10台程度のバイクが置いてあるのに私は自分のバイクを通り過ぎ、何故かふらふらとそのXLに近づいた。そしてオドメーターをのぞき込んで驚愕した。

99,800km

げぇ!もうすぐ10万じゃないか!凄!

バイク乗りがどれほど「バイク乗り」かどうかを知る方法として一番簡単な方法はとりあえずオドメーターで走行距離を見ることである。車と違って1台のバイクで10万走るなんて奴はそうそう居ない。もちろん中古で買ったとか、10万走ったあとに新車買ってまだ1万とか、その場合は真意を見極めることはできないけど、そのXLからは「10万走ってきた」迫力が伝わって来ていた。(それがオーラと言う事なのか?)

当時、私のバイクで確か5万kmぐらいだったと思う。それは自分にとって少し自慢でもあり、ツーリング先々で他のライダーのバイクを見て「まだ1万5千か、青いな。。むふ(^^)」なんて感情を持っていた事も正直言ってある。
そして自分より走行距離が多いバイクなど滅多に、と言うか聞いたことはあるが見たこと無いってのが事実であったのに、この目の前のXLは私の倍、そして夢の10万にあと少しというとんでもないレベルだった。

普通じゃない。私は少し興奮しながら足早に客室に戻った。
10万走ったライダーなら見ただけですぐわかる。(そう、俺と同じ世界にいるのだから。。。)
案の定、そのライダーらしき人物はすぐに見つかった。
2等船室で一人あぐらをかいている。
別にそのライダーがオフロードパンツを履いていたから、とか、HONDAのTシャツを来ていたからとか、そんなんじゃない。ジーパンにTシャツだったがとにかく見て、「ん?たぶんこの人だ」と思った。

「こんにちは(ペコ)」
「はぁ、こんにちはー」

年は私と同じか少し上ぐらいだろうか?日に焼けた顔、ぼさっとした髪で中肉中背の好青年。

「XLの方ですか?」
「えぇ」
「(^^)・・10万kmもうすぐじゃないですか!」
「あはは(^^) うん、家に帰るころは越えてるねー(^^)」

きっかけはコレだけでよかった。あとはこの彼と暇な船内の時間をおしゃべりして過ごした。
そして・・・・
私は今でも「この出会いこそ自分の運命を左右する神が与えたもうた分岐点」だったのではないかと思っている。
話が先走ってしまうが、この後、彼と電話番号をやりとりし、博多で屋台のラーメンを食べる約束をかわしていたのだが・・・・・私は自分が怖くてその約束を守れなかった。

「彼に会えば人生が変わることを恐れて」

・・・・・・・・・・・・・・理由を書こう。

船内のおしゃべりで彼のツーリングに対する気持ちが私を遥かに越えていたことがわかった。
私はよく、(今でも)

「ツーリング、ツーリングと言うけど高速走ってどこが面白いねん!」と言う。が、彼は
「国道走って何が面白いのかねー」とさらっと言った。(県道、林道こそがツーリングだと)
その時点で「ランクが違う」と圧迫された。

更にお互いそれなりにツーリングの味は知っている、夢もある、そう、誰もが考える「海外ツーリング」の話になった時。私はさらに彼に恐怖した。
実はその彼。年内に会社を辞めて来年オーストラリアに旅立つことを計画しているのだと言う。
驚いた私は情けなくも、「資金はどうするのか?」とか「帰ってからの仕事はどうするのか?」とか
くだらない質問をしたのを覚えてる。
そう、そんなことは彼にとっては「どうにかなるくだらない事」なのだ。

ほかにもいろいろ話した。

一ヶ月後1回会った。

・ 
・  

でも私はこれ以上、彼に接触することをためらった。
「やばい、引き込まれる。俺もやってしまう。背中を押されるだけで世界放浪へ。。。怖い。。
羨ましい。。。。でも出来ない。。。。いや出来ないことないさ。。。。でもここは押さえろ。。
でも行きたい。。。いや、これ以上彼に会うのは危険だ。。。ラインを越えてしまう。。。。
なんのラインだ?。。安定した生活?社会人?日本人?普通の大人?常識?幸せ?・・」

とにかくそれ以来彼とは会わなかった。私から「連絡する」と言ってしなかった。





一年後・・・・オーストラリアからの葉書が届いた。

その返事も書いてない。
大変失礼なことをしていると今でも反省している。

木下さん、わかって下さい。私はあなたに連れて行かれるのがこわかったんです。
羨ましい夢の世界に自分が入っていってしまう事を。
ほんとうにごめんなさい。

サラーリーマンになり、結婚し、長いローンで一戸建ての家を持ち、愛犬と妻がいて、ちょっといい車とすごくいいバイクに乗る幸せへの最短、安全コースを選んだ自分。

彼は今も世界を走っているのだろうか・・・・

/=== 95'M900BlackFerrariDESUMO DUE 2001.08.18 25000km & LEGACY B4(BE5C) 850km ===/

ps.このコラムには是非とも皆さんの意見を聞いてみたい。あなたに勇気があるか?私の気持ちをわかってもらえるか?と。
ps.なお、14年も前の話ですから当時「海外ツーリング」なんて一種の「冒険」であり、今ならそんなツアーもあるのでしようと思えば会社辞めなくてもできる。でも・・・それは「ツーリング」じゃないのよねー。

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