二輪魂

遙かなる高みを目指し、もがき苦しみながら
Monsterを走らせ続ける男の挽歌

第四十八輪 笑う、らいだぁ

□コメント
大笑いだ。

 バイクに乗って20年、約10万kmは走ったがそれまでこんなにヘルメットの中で声を出して
 大笑いしたなんて記憶にない。止め処も無く笑いがこみ上げる。止まらない。もうおかしくて
 おかしくて事故りそうなほど笑っていた。今考えてもなんでそこまで「おかしかったか?」が
 わからないがとにかく笑った。

 笑うと言ってもTVのバラエティ番組を見て笑うような笑いの質ではなく、知人のバカ話で笑
 うような笑いの質でもなく、そう、例えれば「宝くじで500万当たった」とか、「馬券で3
 0万儲かった」とか、そんな質の笑いだ。
 宝くじで1億円でも当たったらそれは行き過ぎてしまって「笑う」よりドキドキして狼狽する
 だろう。だから非常に現実味のある「500万」程度がいい。(←生活水準がわかる(^^;)

 そんな笑いは「おかしい」と言うより「笑いがこみ上げる」ようなかんじだ。「ぶははは!や
 ったぜぇい!」「ははは!こりゃー傑作!楽しいねー(^◇^)」だ。
 しかもそれが止まらない、こらえようともしないから、・・そうだな、2分間ぐらいはメット
 の中でバカ笑いをしていた。
 
 箸(はし)が転がってもおかしい年頃?なんて訳ではないとは思うがそれに近い発作的笑い。

□本文


 9月21日 午後8時40分ごろ。
 四国制覇帰路の九州自動車道鳥栖IC手前、自宅まであと1時間。
 夜の高速道路上での大笑い。
 それはJDDから1週間後の3連休を利用して、四国を1泊2日で駆け抜けたその最後の予期
 せぬイベントだった。

 爽やかに晴れる日はなかったJDDと四国、行程約2千km。
 その最後の高速を走りながら夜空が一瞬光った。雲に光が走る。
 「ええ?なんだ?雷か?最後の最後にやっぱ降られるのか?」と思ったその矢先にまた光った。

 そして前方1km?程度の上空で光の花が咲く。

 そう、どこぞやかの花火大会だ。
 「おぉ!花火かぁ!久しぶりにナマで見るなー」なんて思ってるときはおかしくもなんともな
 かった。けれどこの高速道路はその花火に向かって一直線に進んでいる。え?え?と思ううち
 にどんどん花火が近づいてくる、重低音の響き、甲高い破裂音、空に浮かぶ光の大輪。

 そしてその花火の真下?を高速道路が通過する。
 車も私も時速70kmほどでそれを楽しむ。

 ドンドン!ドドン!パリパリパリパリ!溢(あふ)れる光、空気、バイク、俺。
 まるで2000kmのツーリング無事帰還の祝砲にさらされてるようだった。
 そして笑いがこみ上げた。もうおかしくておかしくて。。。

 なんでだろう?

 安堵感?喜び?花火を見れた幸運?楽しさ?・・・・たぶん言葉で表せば「達成感」が近いの
 ではないだろうか?
 チョモランマに登頂、ノースポール到達、難関の大学に合格、事業が成功! そんな時って普
 通「笑う」じゃない(だよね?)。たった1人でも。誰もいなくても「こみ上げてくる」じゃ
 ん。笑いが。

 JDD東京突貫から広島でそのまま仕事して四国を回って九州に帰る怒涛の無理無理ツーリン
 グ。楽しいことばかりだったがそれだけで語り尽くせないほどの濃い思い出。その最後でこの
 花火。

 ドンドン!ドドン!パリパリパリパリ!
 あっはは!わっはは!くぅー!さいこーv(^◇^)v!
 笑いが止まらない。

 四国でもう1泊してたら・・・
 船が1本ずれたら・・・
 臼杵(うすき)でなく大分に着いていたら・・・
 途中のSAで休憩時間がもう少し多かったら、また短かったら・・・

 そんな歯車がきっちりとこの時間、この場所に向かっていた。
 ピンポイントでこの時間、ここを通過し花火大会に出会えた幸運、2千kmの疲れもふっとぶ
 大宴団。


 
 20年走った。
 それなのに「まだ」あるのか?こんな体験が、思い出が。

 大概のことは見聞きしたつもりだ。
 コケもした、風で反対車線に押し出されたこともあった、鹿と事故りそうになった、住所不定
 のおっさんと焚き火を囲んだ、知らない人の家で風呂とメシを頂いた、大雨、雪、ガス欠、出
 会い、霊体験、サーキット、故障で立ち往生(400)、上野バイク通り、タンデム、浸水テント
 、雲海、朝日、夕陽、・・・・

 それなのに「まだ」。
 それなのにまだ「感動」や「感激」があるというのか?バイクで。

 バイクに乗ってなかったらこれほど多くの「事象」を持てただろうか?とも考える。

 いや、これは「驕(おご)り」(思い上がり)だろう。
 20年、一番時間を費やした趣味や娯楽がある人ならなにかしらそんな感動や感激は持ってる
 し「持てる」だろう。でも・・・

 でもバイクはいい。

 簡単に「つらさ」や「感動」、そして「達成感」を手にすることができる。そして時には命さ
 えかかっている。いや、「時には」ではなくバイクで楽しむことの基底には「死なないこと」
 があるわけで、それが巷の趣味や娯楽とはちょっと色が違う。

 昔、YAMAHAの「バイクのCM」がTVで流れていたときのコピーを思い出す。

 『バイクは人間に一番近い乗り物だ』と。



 日本中を走ってこれだけあった。
 するとやはり世界を走ったら凄いだろうな。とも思う。そりゃそうだろうな。
 けれど限られた自由で生きてゆくのも骨がいる。
 会社辞めて家を捨て、外に出た方が楽かもしれない。
 でも・・・・
 それほど人間万歳主義ではないし(笑)
 
 働いて、生きて、そして走ればご褒美があるって奴さ。

 空一面の花火に包まれるようなご褒美が(^^)



 四国編part?U
 今回はエンディングだけ。
 ツーリング道中の話はまたいずれ。

 忘れないうちにこの「笑った」ことを書いておきたかった。

 短めだったが許せ。

 注)タイトルの「笑う、らいだぁ」は最近「嗤(わら)う伊右衛門」(京極夏彦)って本を読んだから(^^;
/=== 95'M900BlackFerrariDESMO DUE 2002.10.30 30000km & LEGACY B4(BE5C) 7500km ===/