二輪魂

遙かなる高みを目指し、もがき苦しみながら
Monsterを走らせ続ける男の挽歌

【7日目】7月28日(0)(1)(2)(3)(4)(5)

□コメント
雨、吉里吉里へ

□本文
7日目:7月28日 タイムスリップ

 北海道3日目の朝を迎えた。
 7時過ぎに起きただろうか?起きてすぐガラスの無い小さな木の小窓の蓋をこじ開け
 外を見た。九州とは時差が1時間はある。いや、時差ってのは言葉が変か、日の出の
 時間が九州よりも1時間早い、と言い直そう。
 昨晩のラジオでは天気が崩れると言ったいたが外は明るい、ん?晴れてるのかな?と
 思って建て付けの悪いドアをあけてショック。天気予報はしっかりと当たっていた。
 ショボショボと雨が降ってる。寒くはないがTシャツ1枚では風邪をひきそうな温度
 の潮風が体にまとわりつく。

 (田口トモロヲ風に↓)
 雨だった。
 ハウスの住民、みな、天を仰いだ。
 その中には遠く 2000kmを走って来た者もいた。
 決断を しいられた。


 さて・・・・・まぁ顔でも洗おう。
 首にタオルを巻き、自前のサンダルをひっかけ湿った砂浜を駆けて派出所の裏手にあ
 る洗面所で顔を洗う。屋根のない洗面所で長居は無用と1分もせずにまたハウスに戻
 る。歯も磨こう。昨晩水を入れていた携帯ポリタンクからマグカップにコップ1杯の
 水を汲み、それで歯を磨く。歯磨き粉など20年以上使ったことがない。歯医者もそ
 れでいいと言っていた。きちんとブラッシングしてればいいのだ、と。

 朝食は買ってなかったが食べない習慣なのでそれも苦にはならない。暖かいコーヒー
 があればいい。ハウスの軒下で時々吹き込んでくる小雨に首をすくめながらポケット
 コンロに着火する、そのゴゥゴゥという音が楽しくて嬉しい。コーヒーはインスタン
 トで十分なんだ。しょせん私のアウトドアは味覚よりも感覚、雰囲気派なのだ。
 朝寝袋から起きて、小雨に打たれ顔を洗い、空を見ながら歯を磨き、風に吹かれなが
 らコーヒーを飲む。そして「無言」。話相手など誰もない。そう、この時間、この時
 間がバイクで走ってる時と同じぐらいに最高なのだ。誰も、何一つ俺の思考を邪魔す
 るものがない。ただゆっくりとした自分だけの時間。これぞ野営1人旅の真骨頂。醍
 醐味の1つだ。

 しかし現実は「雨・・・・か・・・」と頭の中に何度も同じフレーズが浮かび上がる。
 選択は3つある。
  ・雨の中、強行出発する
  ・昼ごろまで(晴れるのを)待つ
  ・今日は諦めてもう1泊ここに泊まる

 雨は10分おきに強くなったり弱くなったりする。それがまた決心を揺るがす。強く
 降ってるときは「こりゃ無理だわ。もう今日はここにいよう」と思うし、弱くなれば
 「ん?これぐらいなら全然行けるじゃん♪」と思う。

 一晩を共にしたハウスの住民の他の3人、ひ弱そうな学生のめがね君はススキノに行
 く予定だからそんな悩みはない。(俺から見れば)ただのプータロウの日本一周中の
 チャリ君も時間に制約はないのでまた寝たようだ。気の合う関西人は3泊4日の限ら
 れた時間しかないので黙々と荷仕度(にじたく:漢字は「支度」でも同意語)を始め
 ている。

 雨・・・・か・・・・ 

 縦断7日目、朝から雨だったのはこれが始めてだ。朝から雨なのにバイクに乗るなん
 て日常生活ではまず有り得ない。朝起きて雨が降っていたら「今日はバイク中止」と
 なるだけだ。しかし今は旅の途中。自宅から2000km以上離れたこの場所では「中止」
 と言う2文字の決断は結構勇気が必要だ。
 なんせ「丸1日分の行程がストップする」ってことだからだ。途中で挽回できる性質
 のものでないし、「遅れを取り戻そう」なんて走りは私のツーリングの楽しみ方とは
 真逆である。自由な時間を限りなく楽しみ、目標も達成する。それがモットーなのだ
 から「遅れを取り戻す」なんて単語はあり得ない。

 もちろんここでもう1泊しても予備日(約5日間)は確保してるので問題はない。
 でもそれは保険であり、まだまだ折り返しもしてないロンツーでその保険を使うのも
 勇気がいる。この先何が起こるかわかったもんじゃないし・・・
 予備日はまだ使いたくない、けど進むのはどうだろうか?この葛藤は山登りに似てる
 気がする。頂上へ、頂上へ、しかしリスクもある、しかし頂上へ一歩でも・・

 この程度の雨でここにもう1泊・・・・するのか?・・・

 道北方面が晴れているか?晴れるのか?それともここよりもっとひどい雨なのか?気
 象庁のサイトを見れば地図上でリアルタイムの降雨量や日照時間の変化、予測まで見
 ることはできる。しかし・・・しょせん「予報」であり、定点の1時間先ならまだし
 もこちらは毎時間50kmは移動しているわけでその道中のその時間のその場所の天候
 がどうなるかなんて答えも期待してないし聞いても気休めにしかならない。ツーリン
 グって奴は「そこまで行かねば何もわからない」のだ。それがいいし、それでいい。

 リアルタイムの書き込みでこんなことを書いている。
========================================
■投稿日 : 2004/07/28(Wed) 07:47
 道内全般雨。ここでレンパクするか、せめて旭川まで進むか。
 旭川まで進んだ場合はそこでちゃんとしたところで寝る。
 いや、ここのハウスもいごごちいいけどやっぱりひとりの時間が欲しい。
 今、この部屋に四人いるけど.・・・まぁ、この話は後で。
 あ、Tシャツ一枚で寝れたよ(今日は)>GON
========================================
 (あ、Tシャツ1枚で寝れたんだ。(前日のレポートに嘘書いてた(^^;))

 コーヒーを飲み干した。湿った風の中、ハウスの軒下でぼけーっと灰色の空を見あげる。
 西を見たり、東を見たり、・・バイクを見たり。。。。槍号はシートカバーがかけられ
 ているので一滴も濡れてはいない。サイドスタンドの下には小ぶりの石を轢いてるので
 砂地に置いていても傾斜してる気配はなし。。。カバーをめくりさえすればいつでも走
 れる。。。。じーっと軒下に座ったままゆっくりとした時間が流れる・・・そうこうし
 てるうちにまた少し小ぶりになってきた。歩くなら傘はいらない。車のワイパーで言え
 ば「簡潔の最遅」モードで十分ぐらいな雨になった。
 
 槍号に再び目をやる。
 妄想劇(「ゲキ」じゃなくて「ヘキ(癖)」か?)が始まる。

【7日目】7月28日(1)

 槍号に再び目をやる。
 妄想劇(「ゲキ」じゃなくて「ヘキ(癖)」か?)が始まる。

 槍「雨だね」
  うっさい、わっかってるっちゅーねん。
 槍「走んの?」
  さぁ・・・でも雨がどうした、いやか?
 槍「笑わせるな、走るかどうかはてめぇが決めるこった」
  ふん、相変わらずクチの悪いやっちゃなぁ・・・
  でもそう言えば20年前も雨だったなぁ・・・最北端直前は・・
 槍「先代の話・・・・・か」
  そう、おまえには先代(CX)を越えてもらわきゃいかんのよ。
 槍「ん?あぁ、それは俺も望むことろ。先代には悪いが越えさせてもらうさ」
  うん、そうだよな、それが先代への礼儀でもある。
  日本で一番遠い所・・・・
  そこに行くために雨もくそもない。ってことか・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・じゃ、行きますか?
 槍「ああ、俺は全然かまわんぜ、正直俺も早く見たいわ、その『最北端』って奴を」
  よっしゃ、んじゃキマリだね。
(妄想劇終了)

 晴れの方が気持ちはいいだろう。しかし「晴れの方が美しい」とは限らない。雨なら
 雨で雨の時にしか味わえない風景があるだろう?それを見るのも一興ではないか。何
 千km走るかしらないがずっと晴れならきっと1999年の能登半島ツー(富士山か
 ら能登半島に行き九州まで帰った2000kmツーリング)のように「快適すぎてつ
 まらない」で終わってしまうかも知れない。アクシデントやトラブルは御免だが、イ
 ベントなら大歓迎。そう、雨もイベントの1つにすぎん。

 『よし、行くか』  そう決断したころはもう9時を過ぎていた。

 最北端まで約306km、1日で行ける距離であり、ゴールと言うか、折り返し地点
 である最北端はもう射程圏内である。

 しかしその前に行きたいところがあった。是非行きたいところがあった。それは羽幌
 (はほろ)と言う観光ガイドには乗らないただの道北の小さな町。そこに行きたい。
 そこには21年前の私がいる。会ってみたかった。

 縦断前に狩り(国道写真を収めること)を行うのに最適なルートを組んでいたのだが、
 そのルートは羽幌を経由するルートではなかった。なるべく最短ルートで狩れるルート
 を練っていたし、羽幌を通らないことは少々気にはしていたが人生2度目の日本縦断、
 その大イベントで21年前と同じルートを走ってもつまらないと思っていた。
 しかし、新潟、秋田、青森、札幌、と北上するにつれて、「あの」羽幌に行きたい。と
 言う衝動が湧いてきた。
 そして昨晩、石狩ライダーハウスに行く前のビックリドンキーで地図を見てルートを再
 考したら羽幌(はほろ)経由でも道内の国道を全部狩れる別ルートを編み出したのだ。
 最初は40号線を北へ北へ向かい稚内直行ルートで進み、その道すがらで40号を背骨
 に左右の国道を狩るプランだった。
<map0>縮小図 四角の囲みは150km 150km程度 
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-0728-map0.jpg
 旭川から北に向かう黒い線が40号線。旭川の西、日本海側の「留萌(るもい)」の
 少し上に羽幌町がある。西の海岸線を北上しても40号線を堺に右側(東側)にある国
 道は最北端から南下する時に狩れば走行距離もさほど増えない。そのルートに編みなお
 した。日本海側を北上して羽幌経由で最北端へ・・・羽幌の「吉里吉里(キリキリ)ラ
 イダーハウス」
 
 そこに21年前の私がいる・・・・15年前の私もいる。

 出発した。
09:46 車載カメラからハウス出発時の写真
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07280946-house.jpg

 ハウスを出る時、2、3人の見送りの視線を軽い会釈で流しながらさほどのなごり惜し
 さも後ろ髪もひかれず、それよりも砂地でコケては大変だと慎重にゆっくりとアスファ
 ルトの上に出た。昨夜来た県道225を逆に走り、昨夜狩った国道231に出る。
 雨はしょぼしょぼとシールドに雨滴を付ける程度だ。

 ルートは頭に入っている。まずはこの231号線で石狩川を越えたら内地へ向かう33
 7号線(これも昨夜狩っておいた)に乗り、275号線にぶつかったらあとはそのまま
 北上して滝川市に入る前に平行して走る12号線を狩って滝川市で451号線にちょっ
 とだけ入ってUターンし、あとは233号線に乗れば海にでる。海に出れば232号線
 を50km北上すれば羽幌だ。羽幌の吉里吉里で宿泊できれば工程約160km、この
 旅で一番移動距離が少ない1日となる。
<map1>縮小図 map0の四角部分の拡大 黒点がルート。赤い点が狩りポイント
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-0728-map1.jpg

 順調に行けば十分に日が沈む前に吉里吉里に辿り着くだろう。今もあの吉里吉里が営業
 中なのか?それはまず間違いない。ツーリングGOGO(ライダー用旅行小雑誌)には
 まだライダーハウスとして紹介されていたのを昨晩見ていた。
 吉里吉里は元々(20年前は)ライダーが集まるただの喫茶店だったのだが、その後1
 kmほど移転し、立派になり、宿泊施設もできたことを風の噂に聞いていた。15年前
 に新婚旅行で立ち寄った時にたしかにその事実を確認した。

 私が20年前に何故吉里吉里を知ったのはかもう今となっては定かではない。
 「そこに行けば店の人が記念写真を撮ってくれる」ただそれだけことを(何故か)知っ
 ていたので「へぇー、いいね、そこに行ってみようっ」と、思ったのは覚えている。
 やはりしょぼしょぼと丁度今日のこんな天気の中、混み合った店内で暖かいコーヒーを
 飲み、1時間ほどくつろぎ、出るときにバイクといっしょに写真を撮ってもらった。

 記念写真は店内に来訪者アルバムとして保存される。何年ごろから開業したのか、確か
 1980年ごろと思うのだが、かなり膨大な人数のアルバムが年代ごとに綺麗に棚に
 並んでいる。訪れたライダーはそのアルバムを手にとり、昔のバイクを楽しんだり、知
 人を探しながら時を過ごす。写真の横には数行の本人のコメントも書かれてあり、ライ
 ダーなら思わずニヤリとするような事やびっくりするようなキャラや旅話もあるのでへ
 たなバイク雑誌を読むよりもとても面白い。
 ただ、本人がコメントを書くときは本人の写真は無い。自分の写真が入る予定のスペー
 スの横にコメントを書き、数日後、現像が終わると自分の写真がそこに収まる。だから
 自分の写真を見るためにはもう1度吉里吉里に行くしかない。

 尋ねたことはないが焼き増しして自宅に送ってくれるようなことはしていないと思う。

 だって「もう1度そこに行かない限りその時の写真は見れない」これこそがこの企画の
 面白いところだろ?だから撮ってもらう価値があるのだろ?「焼き増しして送ってくれ
 ますか?」なんてことを言うのは非常に無粋だと思う。このイベントの意味がわかって
 無い奴だ。なーんて思っているが頼めば意外と簡単に写真を送ってくれるのかも知れな
 い。けど・・・・なんか「自分の写真なのにそこに行くしか見ることが出来ない」って
 方がなんか面白いじゃん。なんかちょっとロマンがあるじゃん(笑)

 吉里吉里のオーナーの意思が私のこの想像通りであることを望みたい。旅が好きだから
 こそ、旅人を写真に収めているのではないだろうか?
 とにかく私の中では吉里吉里への想いはどんどん美化され、宿泊施設が出来たと知った
 時は「そうか、あそこで泊まれるようになったのかぁ、いつか泊まってみたいなぁ」と
 思うようになっていた。

■挿絵:スタートして15分後、雨の中ゆっくり走行中(10:01) 車載カメラより
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281001-ame.jpg

 今日は(吉里吉里は)空部屋があるだろうか?しかしそれは調べない。行けばわかる。
 それでいい。

 何度も言うが自由を最大限に楽しみたいのだ。
 だから自由の(未来の)選択肢は1つでも多い方がいい、もし午前中に宿を予約して
 しまったらその日はそこまで行かねばならない。旅に(未来に)1つの制約ができる。
 それがイヤだ。万が一道中で素敵な場所や偶然の出会いがありルートを変更するかも
 しれぬ。
 え?予約だけして何かあればキャンセルすればいい?
 いや、それも違う、だってそうなった時は今度は「キャンセルしなければならない」
 と言う制約が生まれるではないか。しかも性格的に「キャンセルしたら迷惑ではない
 だろうか?」「キャンセルするなら何時までにキャンセルすればいいだろうか?」
 そんな心配ごとも予約した瞬間から始まってしまう。

 「○○しなければならない」そのフレーズが私の旅に存在したくないのだ。
 なるべく1つでも「何もない」を楽しみたいのだ。

 北海道の国道を全部狩らなければならない。 それは「目標」であり「希望」。
 8月5日には自宅に帰っておかなければならない。 それは「摂理」。
 GPS位置情報やリアルレポートを発信しなればならない。 それは「試み」。
 そして、道中無事でなければならない。 それは「条件」いや、「義務」か?
 
 とにかくこれ以外の「○○しなければならい」は皆無でいたいのだ。


【7日目】7月28日(2)


 275号線を北上すること20分、広い路肩を見つけて今日初めての狩りを実施。
■挿絵(10:23) 275号線ゲット【15/56本】(カメラ:E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281023-R275B.jpg
■挿絵(10:24) 手作りの防水カバーを装着した車載カメラ&275号線 (E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281024-R275F.jpg

 275号を狩ると雨は強くなってきて大型トラックの水しぶきを浴びながら我慢の
 走行になった。
■挿絵(10:36) 雨足が強くなる (車載カメラ)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281036-ame.jpg

 こっちは安全に時速60キロ程度だろうか、しかし国道を走るトラックは優に時速
 100kmは出しているから後ろからプレッシャーを感じる。路肩が広い道ならそ
 れでもいいが275号線は片側1車線になってしまい、路肩が狭いところではこっ
 ちも100km出すか、逆に30kmまで落として抜かせるかしかない。雨ゆえに
 いつも以上の危険予測モードで走らなければならないしバックミラーも頻繁に見な
 いといけないので非常に疲れる。さっさと国道12号線へ行った方がいいかも知れ
 ない、12号線ならば2桁国道だしずっと片側2車線で走りやすいんではないだろ
 うか?そう思って275号線と別れ12号線に出るだろうと思われる県道(いや、
 北海道だから道道(どうどう))に入った。275号線からそれて東へ走れば必ず
 12号線にぶつかるはず。。

 道道に入ったそのとたん、交通量は一変し、前も後ろもなーんも車がいなくなって
 しまった。右も左も田園・・・じゃない牧草地帯なのだろうか?建物もなく広々と
 した空間であり実に北海道らしい・・・・と言いたいところだが、雨のせいでその
 「らしさ」がさっぱりと感じられない。ハウスを出るとき、「晴れの日の方が美し
 いと誰が決めた?」なんて大見栄をきって出たのはいいがこの雨の中、近景さえも
 霞み、遠景は霧でさっぱり。
 全く、一向に面白くない。なにが「雨なら雨の景色がある。」だ。自分で笑う。

 晴れてれば広大な牧草地(たぶん)の中を鼻歌まじりで走っていたに違いない。で
 も・・・まぁいいや、一度走り出したら進むしかない。天気を恨んでもしょうがな
 い。それがロンツー。。。。(言い訳)

 30分後、予想通りに12号にぶちあたりさらに北上。
■挿絵(11:10) 12号線ゲット【16/56本】消化狩り(カメラ:E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281110-R12.jpg
 片側2車線で路肩も広い♪でも雨

 滝川市を抜けるとすぐに西(左)へ延びる451号線があるはずだ。そう思ってい
 るとなんと東(右)が451号線であることを示す標識を発見した。
■挿絵(11:31) インターバルシャッターが偶然捕らえていたその標識(車載カメラ)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281131-R451@.jpg
 ちょっと見難いが右が451と書いてある。

 まぁ、国道同士が交差点で交差せず、一定区間を開けて繋がってる国道も珍しくな
 い。451号線もその類なんだろう。451は本線でないから狩ったらすぐUター
 ンする国道だったので見つけたらすぐに狩っておいた方がいい。そう思ってさっさ
 とこの標識に従い右折して30mほど走ると早速おにぎりがあった。
■挿絵(11:35) 451号線ゲット【17/56本】消化狩り(カメラ:E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281135-R451.jpg
 (注:消化狩り とはアングルや背景に拘らず単なる証拠として残した絵のこと)

 さて、451の写真を見てもわかるように雨はやみ空は曇天となった。合羽はみる
 みる乾いてゆき、道は交通量も少なく、あとはこのまま道なりに進むだけで羽幌ま
 で行くことができる。
■挿絵(11:46) ちんたら走行中(車載カメラ)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281146-kumori.jpg
 安堵感からやっとメシが食いたくなった。丁度タイミング良く立派そうな道の駅を
 見つけた。「うりゅう」道の駅。
http://www.hokkaido-michinoeki.jp/data/46/each.htm

 ガラガラと乾式の五月蝿い音を立てながら建物の裏手に人の来ない屋根付きのスペー
 スを見つけてそこに停車。濡れたグローブを外し、ヘルメットを脱ぎ、合羽の上を
 脱ぎ、そしてブーツカバーの右、左、最後に合羽の下を脱ぐ。バイクが衣紋掛けの
 ようになっていく。その時気を付けなければならないのは合羽などは熱に弱いから
 エンジンやマフラーに触れないようにしなければならない。万が一触れてしまうと
 合羽には穴が開くわ溶けたビニールがバイクに張り付くは、散々な目に遭う。私自
 身、そんな経験はないがそんな経験をしたライダーは数回見たことがあるし何度も
 聞いたことがある。

 ハンドルに合羽をひっかけ、風で飛ばされないように数箇所を洗濯バサミでとめて
 メットをダイアルロック式のワイヤーで固定し、車載カメラの電源をオフにして充
 電用のスイッチ式コンセントやらも降車時の事前シミュレーション通りにきっちり
 オフになってることを確認する。(LEDランプの1つでも点灯したままではバッ
 テリーを消耗する。こんなところでバッテリーあがりとかとんでもない)。タンク
 バックだけを持って店内に入った。本当は手ぶらで入りたいところだがタンクバッ
 クの中にはこの旅一番高価な装備であるデジ一眼のE-1様が入ってる。メットや
 寝袋を盗まれてもいいがこれだけは万が一を考えると卒倒しそうなので置いていく
 わけにはいかない。

 レストランの中に入ると結構混雑していた。丁度12時で昼飯時とぶつかったよう
 だ。ウェイトレスに案内され、ファミレス並に広いフロアの一角に座る。そしてメ
 ニューを開いてがっかりした。どれも「高級」なのだ。
 ミートスパゲティ550円とかハンバーグランチ700円とか、そんなお子様メニ
 ューがなく、仰々しい名前の付いた○○御膳が並んでいる。
 いくら御膳、北海道御膳、ホタテ御膳、海鮮御膳、うに御膳・・・・
 あー・・どれもちっとも嬉しくない。いくらもウニもホタテにも興味はない。カニ
 は好きだがそれこそカニ御膳だと2000円もする。有り得ない・・2000円出すなら昼
 飯は500円にして、野営で1人宴会に1500円使えば豪遊ができる。全然そっち
 の方がいい。昼飯なんて腹になにか入ればいいのだ。

 とは言っても北海道コンビニ巡りも別にしたいわけじゃなし・・・しょうがないの
 でラーメンとエビフライと気持ちだけいくらの乗った丼のセットを注文。1200円ぐ
 らいだったと思う。安いんだか高いんだか微妙である・・・
■挿絵(12:07) 何御膳か忘れました(^^;(携帯カメラ)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281207-lunch.jpg

 味は・・・一切なんの感動もなく・・・・なんだかなぁ・・・ファミレスで十分。。

 レストラン内はどんどん人が増え、ほぼ食べ終えたところで私の座ってるテーブル
 も相席となり、ゆっくり地図を広げる心持にもなれなかったので小さなため息を1
 つして退散。まぁ混雑にまぎれて金を払わずに出れたのがラッキーと言えばラッキ
 ーだったかな。(って!嘘よ!そろそろ読んでて飽きてるだろうと思ってびっくり
 させただけですよ!ポロッとカミングアウトしたあびる優じゃあるまいし(^^;)

さて・・・吉里吉里はまだか?すみませんもう少し引っ張ります。

 まぁ、ここで一気に話を進めてもよいのだが4700km走って何故か記憶に残るシーン
 ってものがあり、なんでもない街角や情景の一瞬が脳に残ってることがある。そん
 な脳内写真の1枚にレストランを出て直後の数枚が写っているのでせっかくだから
 書いておこう。1年経ったら忘れてるかも知れないし。。で、カットしてもいいく
 だりなので何も期待しないこと。

 外に出てすぐに缶コーヒーを探してレストランの軒下のベンチで地図を広げている
 と駐車場の方向からキャーキャーと声が聞えた。目を上げるとオバチャン達(その
 固体数約10数体)で何を騒いでいるかと思ったらかなりの突風が吹き荒れている
 のだ。自分が座ってるベンチは建物のくぼんだ場所にあったのでさほど風は感じな
 かったのだがなるほどよく見ると大きな木はゆさゆさとたわみ、おみやげ屋のテン
 トは支柱ごと吹き飛ばされそうな感じで見ているだけでちょっとアドレナリンが余
 計に出るほど危険な状態だった。
 そんな強風に煽られ、オバチャン達は私のところまでやって来た。オバチャン達に
 とってみれば突風はアクシデントだったろうが俺にしてみればオバチャン達そのも
 のがアクシデントである。私の周りはたちまち雑音に満たされ、私の時間は吹き飛
 ばされてしまった。(ここまでがカットしてもいい話)。


【7日目】7月28日(3)


 ええい、さっさと出発するか・・・
■挿絵(13:15) うりゅう道の駅裏手 出発直前(車載カメラ)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281315-mitinoeki.jpg

 突風は一時的なものだったらしく、走行にはなんら影響なし。
 さて、このまま5、6km走れば日本海へ通じる233号線に出る。その233
 号線を30km走れば留萌(るもい)、海だ。海に出て海岸線を北へ走る232号線
 を50kmで羽幌である。

 迷うことなく233に乗った。なんら変哲もない、田舎と田舎を繋ぐただの道。
 民家もなく、高い山も大きな川も怖い崖もなにもない田舎国道。おにぎりは5km
 間隔ぐらに見つかるものの、絵にならないとかそんな理由よりもバイクを停めて写
 せるようなスペースもなく、安全面から次々とパスして行った。
■挿絵(13:45) 233のおにぎりはあるものの・・・(車載カメラ)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281345-R233@.jpg

 10個は見逃しただろうか?
 えー・・・もうそろそろ233終わってしまうんじゃない?・・・そんな不安が
 どんどん高くなってくる。よし、今度こそ、今度こそ・・・・あ!あった!しかし、
 ここはさすがに(撮影に)無理だなぁ・・・よし、今度こそ、今度こそ。。。
 しかしいざとなってからピタリとおにぎりは現れなくなり、焦っているといきなり
 道が開け、建物が目に入り、そして目の前の交差点には「232→」と標識に書か
 れてある。ついに233号線を狩らずに30km走って留萌まで着いてしまった。

 当然の結果とは言え、結構ショックが大きい。
 狩る対象のおにぎりは見つけたらとにかく最初に1枚撮れって決めてたのに。。。
 ちょっと自己嫌悪も発生する。しかもこの先の行動は決定されている。二度と走る
 ことがないかも知れない北海道、国道1本たりとも諦めるわけにはいかない。

 『Uターンするしかないやん・・・』

 北へ北へ北へ向かっているのになんでUターンなん?アホくさー・・・
 そんな愚痴を言いつつも頭の中で今来た道のリプレイを始まる。
 えっと・・・最後に見たおにぎりからここまでが15km(そこら辺はぬかりなく
 記憶しているのだ)、で、15kmの区間で「反対車線」にたしかおにぎりが1個
 あったなぁ(ハンターとして反対車線の獲物にも気を配るのは当然)、ここから10
 kmほど戻ればいいかな? その記憶はほぼ正解だった。
■挿絵(14:01) 233号線ゲット【18/56本】playback狩り(カメラ:E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281401-R233.jpg

 狩ると再び10km走って留萌へ戻る。ただそれだけのことではあったのだが。。。
 私的に微妙にイヤな感覚に包まれる。
 往復20km、時間にして30分。このロス自体は痛くも痒くもない。しかしこの
 30分で全ての歯車(今日のこれからの過程)が一丁ずれたわけだ。今からすれ違
 う車、止まる赤信号、道路を横切るオバチャン、飛び出してくる軽自動車、これら
 が全て「本来の時間の30分後の世界」へリンクしてしまったわけだ。

 これは私が常々語り聞かせているポイントゼロ(その瞬間にたまたまそこにいたこ
 とで発生する交通事故)への布石かも知れない。今日これから、万が一何かが起こ
 ったとき、一番思いたくないのは「あの30分が無かったなら」である。自らのつ
 まらないミスで普通だったら体験することのない時間軸が違うパラレル世界に入っ
 てしまった、それが「微妙にイヤ」な感覚として私を包む。

 だからこそ、こんな時はいつも以上に「本来と違う世界にいる」ことを重々と受け
 止め安全に2倍気をつける必要があるのだ。そう言う癖をつけておけばなにかちょ
 っとしたことが発生するたびに緩んだ気持ちが引き締まる。

 コンビニ店員のお釣りを返すのが妙に手間取って遅い時、
 複線の踏み切りで電車2往復分も待たされて渡れなかった時、
 制限速度40kmのところを120kmで走った時、
 大型工事車両が左折に失敗して交差点で切替ししていた時、

 そんなちょっとした「ん?」を気にすれば気にするほど安全へのボルテージも上昇
 する。それがロンツーを成功させる1つの秘訣だ。いや、ロンツーに限らずバイク
 と安全に長く付き合うための秘訣でもあるだろう。

 ずれた時間軸の中ではそのずれた時間軸に逆らわず慎重に進めばよい。ただし本来
 の世界ではないことを意識しておく必要があるのだ。

 留萌を抜けて少し走り、コンビニで休憩した。
■挿絵(14:43) コンビニ駐車場で休憩(車載カメラ)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281443-konbini.jpg

 このコンビニ、ローソンなのに店内に「さぬきうどん」があるのよ。立ち食いの。
 いや、椅子とカウンターもあったな。福岡のローソンで店内で食事ができるような店
 舗は見たことがなく、車載カメラが偶然捕らえていたので紹介。

 コンビニの裏手はすぐ目の前が海だった。日本海っぽい重い海がどよよーんと広がり
 当然泳いでる人も浜辺で遊んでる人も誰一人おらず、そのまんま演歌に出てくるよう
 な寂しい海。その海を見ながら232号線を北上する。さっきの233みたいにUタ
 ーンはしたくないから撮影できそうな232をさっさと狩った

■挿絵(14:46) 232号線ゲット【19/56本】消化狩り(カメラ:E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281446-R232-1.jpg
 羽幌まで37km。標識的には絵になるが海はかすかにしか写っておらず、左手の
 大きな看板もじゃまで不本意。
 しかしその後、「いかにもこれが232号線」的な情景に遭遇する。

 10分走ると風力発電群が見えてきたのだ。21年前には、そして15年前にもな
 かった風景だ。
■挿絵(14:46) 232号線と風力発電(カメラ:E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281454-R232-2.jpg
 (かなり圧縮してるので空のグラデーションは粗くなってますが)
 写真右手奥を拡大
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281454-R232-2kakudai.jpg

 さらに風力発電に近づいた。(カメラ:E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281514-R232-3.jpg
 ちなみにリアル送信でこの画像もBBSへ公開したかったので携帯でも撮った
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281518-kaze.jpg

 これだけの風力発電が並び、ぶおんぶおんと羽を回しているのでは非常に圧巻で壮
 観な眺めであり、かつ、そこにおにぎりがある。久し振りに絵になるおにぎりだと
 15分はここで撮影大会をしてました。

 羽幌まで、吉里吉里まであと10km地点。本日最後のおにぎりをゲット。
■挿絵(15:26) 239号線ゲット【20/56本】消化狩り(カメラ:E−1)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281526-R239.jpg

 よし、あとは吉里吉里。まだ16時にもなってない。泊まれることができたらどん
 なにゆっくりした時間を過ごすことができるだろう?期待と不安を胸についに羽幌
 に到着。
■挿絵(15:43) 羽幌町(車載カメラ)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281543-hahoro.jpg

 10分も、いや5、6分も走れば通り抜けてしまう小さな町。21年前の風景なん
 か覚えてない、残片的に覚えてはいたとしてもそれと今この目の前の風景は1つも
 合致なんかしやしない。だらだらと町のメイン通り(232号線)をキョロキョロ
 しながら走る。すると町の終わりまで来てしまった。あら・・・もっと町の中心に
 あったはずだが・・・ええい、そこのコンビニで聞いた方が早いか。

 「ここら辺にキリキリってバイクが集まる喫茶店ありませんか?」
 レジのおばさんは2秒ほど視線を空中に泳がせながら自信なさそうに答える。
 「あー、・・・うん、そこの○○を左に曲がったらところかなぁ・・・」

 その答えにちょっと疑問を持った。それは指示された場所への疑問でなく、こんな
 小さな町で九州からわざわざ「吉里吉里」を思ってここまで来たのに地元の住民が
 「そんなのあったかしら?」程度の意識しかないのだ。
 やっぱり・・・・この町も吉里吉里もマイナーであり、ライダーには相変わらず市
 民権はなく、バイクに乗らない人から見れば「ライダーが集まる店」なんてのも全
 く意識の外なんだろう。。。でもこんな小さな町で「あの」吉里吉里をどこだっけ?
 と考えるなんて・・・そんなにそんなにマイナーなのだろうか?・・・

 まぁいい、逆に吉里吉里1号店2号店3号店などと大きくなり羽幌が上野のバイク
 通りみたいになってしまったら二度と訪れる気はしなくなるだろう。

 レジのおばさんの言う通りにバイクを進めると・・・・あれ?あら?ん?あぁ?

 ちーっとも吉里吉里を見つけることができない。単なる住宅街。厳しい冬の中で生
 活をしている小さな漁村的な風情がある地味な家々が並ぶだけ。
 おかしい・・・おかしい・・・・と言うかこの風景はなんとなく記憶にある、そう、
 まさしく21年前の吉里吉里はこんなところにポツンと、「なんでここに?」みた
 いな場所にあったのだ。

 あ・・・・あのコンビニのおばさん、もしかして「古い」吉里吉里の場所を俺に伝
 えたのだろうか?ええい、面倒だ、今度はGSで聞こう。国道に復帰してGSに入
 るとなんとB5ぐらいの羽幌の地図ですらすらと教えてもらい、その地図も頂いた。
 メジャーじゃん、やっぱメジャーじゃん。あのコンビニのおばさんが地元のスポッ
 トに疎いだけじゃん。ちょっと安心した。

 GSの説明によると私は吉里吉里をとっくに通り過ぎてるらしい。(羽幌に入って
 国道のすぐに右手に吉里吉里は存在していた)。

【7日目】7月28日(4)

 3分もしないうちに吉里吉里発見(^^)
 国道の横にちゃーんとそれはあったのだが15年前の新婚旅行でも来てるはずなの
 に全く記憶がない。こんな入り口だっけ?こんな建物の色だっけ?こんな曲がり角
 にあったっけ?こんなところにバイクや車をとめてたっけ?
 15年前の記憶より、21年前の記憶の方が何故か断然鮮明だった。理由はなんと
 なくわかる。初めてたった1人で日本縦断した時の思い出とただ楽しいだけの新婚
 旅行の思い出と、どちらが人の記憶に鮮明残るか?たぶんそんなところだろう。

■挿絵(16:05) 吉里吉里 
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07290945-kirikiri.jpg

 さて、入り口でバイクを停める。着いたはいいがすぐに不安になった。なんせバイ
 クが1台、しかもラット系のきったないハーレーが1台しかいない。もうその汚さ
 と言ったらド肝を抜くような凄まじさでありきっと金髪ロンゲで視線も交わしたく
 ないような奴が乗ってるに違いないと思うほど変なバイクが1台、そしてガラス越
 しに見える吉里吉里の店内は明らかに照明が落ちている。人の気配なし。

 え?・・・そんな馬鹿な・・・いくら今日は天気がこんな風で平日だといえ、7月
 下旬、バイクシーズン真っ只中と言うのに吉里吉里が閑散としているなんて・・・

 気配を伺いながらしばしたたずんでいると入り口に人影が見えた。ドカの音を聞い
 て中から出てきたようだ。私は近づいて頭を下げると同時にその人に言われた。

 「今日はねぇ・・・休みなんですよ」と。

 ガーン・・・・や・す・み?・・・定休日?・・・つ、ついてねぇ・・・・

 今日は休みだと言ったおじさんはどう見ても吉里吉里のオーナーだ。顔なんて覚え
 てないけどそれ以外ありえない。オーナーは続けて言う。

 「喫茶店はね」(喫茶店の方は休み)
 あ、じゃぁ泊まれるのは泊まれるんですか?
 「ああ、泊まりはOKだよ、1人?」
 (やったぁ!)はい!1泊したいんですけど・・・
 「あ、そう、じゃぁバイクそっちに停めてー」
 はい!(やった、やったぁ♪吉里吉里で泊まれるぅー♪)

 喜びいさんでバイクを移動させ、荷解きもそこそこに閉店中の喫茶店に入った。
 そして自分の思い(目的)を告げた。
 九州から来たこと、21年前にもここを訪れ、その時の写真を見たいこと、15年前
 の新婚旅行の写真も見たいこと、喫茶店は閉店していてもここにある写真は閲覧可能
 かと言うこと、

 ノープロブレム。オーナーは快く私の申し入れを受け入れてくれた。特別に許可する
 って話ではなく、泊まり客はこの喫茶店のスペースを自由に使えるとのことだった。

 部屋の確認、食事は要らない、風呂も近くに温泉があるので車で連れて行くことも可
 能だとのことだが私はむしろ「吉里吉里の風呂」に入りたかったから遠慮した。

 もう一度吉里吉里の写真。
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07290945-kirikiri.jpg
 中央奥が喫茶店棟、左が宿泊施設棟で7室21名の宿泊が可能である。
 部屋の中は外から見るより小奇麗で立派。(携帯写真)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07282249-bed.jpg
 ちゃんとドアにも鍵があるし窓もあるし電源もある。
 1泊2食で相部屋なら5550円、相部屋を個室利用なら6600円程度。
 私は素泊まりだったから4千いくらかだったと記憶する。

以下、吉里吉里に置いてあったポケットティッシュの中の小さな折込広告から引用。

 「かつて旅人だったとき「もう一度泊まってみたい」と思った宿をお手本に吉里吉里
 をやってます。モ・・・FOR ALL PURE TRIPPERS.モ吉里吉里
 のテーマです。
 吉里吉里では、吉里吉里ライダース名鑑と言うのを作ってます。大好きなBike&Rider
 の変化を吉里吉里と言う定点で記録に残そうと1981年から始めました。もう4万
 台近くのBike&Riderが記録されてます。カフェ、宿を問わず吉里吉里にBikeで来られ
 たら「いや」と言わない限り写真に撮らせて頂きます。それがCubでもCBR1000RRでも
 同じです。『旅』が好きでBikeが好きで心から『自由』を愛する素敵なRiderたちの
 参加を待ってます。ちょっとした旅の思い出にお気軽に参加下さい。」

 って、実はこの原稿を書いてて宿泊料金がいくらだったのか調べててこの折込広告を
 発見したんですが。。。いやぁー、これで「俺が何故吉里吉里に行きたかったのか?」
 が読者にも伝わったかと思います。 
 しかし驚いたのはこの数行の広告の中に「TRIPPER」てな単語はあるし(私のハンドル
 名のLipperの後半はTripperからの引用)、「カブでもCBRでも」とは俺がよく言
 ってる「何に乗るか?ではなく、どう乗るか?」の意味であり、「自由を愛するRider」
 とはこれまたまさしく私のツボにピンポイント。こりゃぁ私のアンテナが反応しない
 わけがない。と、旅を終えて半年以上経った今何故吉里吉里に心を動かされるのか明確
 にわかった次第です。

 やっぱりオーナーの気持ちがあそこには溢れてる、満ち満ちている。その波長が俺み
 たいなライダーにぴったりだったんだろう。21年前とかオーナーと何も会話してな
 いし15年前も「6年前来たんですよ」ぐらいにしか会話した記憶がない。それでも
 ここにある「なにか」が好きで好きで今回もルートを編みなおしてやって来たのだ。

 それほど私の心にシンクロするものがここにある。


 荷を解き、一心地ついたところでオーナーがコンビニまで私を車で送ってくれると言う。
 その時に「柴田君!行こうか、」と呼ばれた。
 43歳で君付けとは少々照れるが反射的に「はい!」と元気よく返事をする。(この
 ような快活な返事は得てして年配の方には好感度UPとなり、私の処世術かどうか知ら
 ないが返事は元気よくする癖がついている)
 壊れそうな小さな車で先ほどうろうろしていた国道を走り、コンビニみたいなスーパー
 でパンとか酒とかおにぎりとかツマミを買って戻る。

 喫茶店は閉店だがそのスペースは自由に使える。小さな家庭用の風呂を頂き、客のいな
 い喫茶店で(私的にこれ以上嬉しい環境はない)音量の小さなBGMを聞きながら自分
 の時間を堪能する。
■挿絵(19:43) 吉里吉里で陣取る 広いカウンターがとても落ち着く。
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281943-kirikiri.jpg
■挿絵  壁には4万人分のライダース名鑑。(写真の棚はその1部)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07282010-book.jpg

 目的のアルバム、いや、ライダース名鑑を見た。21年前の自分だ。
 1984年の8月。
 その1ヶ月だけで名鑑は3冊にもなっている。1冊200人ぐらいの写真があるから
 600人、毎日20人の違う旅人が訪れていたわけだ。
 その3冊目に自分を見つけた。
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281953-CX400.jpg
 あー、これだこれ。意味不明のイギリス国旗。いや、これには意味があるのだが今と
 なってはかなり恥ずかしい理由なので気になるならオフ会の時にでも聞いてくれ。
 緑色の布ツナギ、軽装に見えるが実はこの下には革ツナギを着ていたのだ。真っ黒の。
 親戚からもらった奴だがなんとなく革ツナギとか恥ずかしくてその上からこの布ツナ
 ギを着たことを覚えている。リアのバックは登山用のリュックだ。当時そんな立派な
 ツーリングバックとかない。ピンクの奴はウレタンマット。大きい(笑)。写真には写
 ってないがタンクバックはもちろんコロナ製だ。(バイク歴20年ライダーなら絶対
 知ってるコロナのバック!懐かしすぎて笑うところ)

 この時の写真自体は新婚旅行の時にも見ていたから感激することはなかったがそれで
 もその時から15年、この写真から21年経過してるわけでなんと言うか懐かしいと
 かそんな簡単な気持ちではなく、むしろため息がでるようなしみじみとした感慨のよ
 うなものが湧く。だって「今ここに『また下道縦断した』俺がコレを見ている訳であ
 る」。そんなことがあり得るのだろうか?なにか非現実的な夢を見ているような気分
 だった。

 CX400・・・今回の日本縦断を終えてたまたまこの写真のバイクに会う機会があった。
 後輩のところでついに車検を通さず、21年の命を閉じたCX400、「処分する時
 は必ず俺に連絡すること」を条件に無償で譲ったわけだが後輩も6年乗り、さすがに
 もう車検はつらいと言い出したのだ。二児のパパだし。
 21年前には想像もできなかったデジタルカメラでCXの写真を撮ってあげたかった。
 後輩の家の前で撮影した。
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281953-CX400-3.jpg
 結構綺麗だろ?とても20年前のバイクと思えないだろ?実際、バッテリーさえ替え
 ればまだまだ走る。そうそう、吉里吉里のオーナーにもまだこのCXは現役で春まで
 実際に乗っていたと言ったら「じゃぁそのバイクでまた来れば良かったのに」なんて
 言われた。びっくりした提案だったがなるほど、それも非常に面白い試みだと思った。
 20年も同じバイクに乗ってる奴なんてそうそういない。マジで今度来る時はCXで
 挑戦しようかな?なんて思った。

 後輩の家の前でいろんな角度から写真を撮ってるとふとその手が止まった。リアシー
 トの小物入れにたしかにこのバイクでここ、吉里吉里に行った証拠が残っていた。
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281953-CX400-2.jpg
 KIRIKIRIのステッカーを貼っていたことさえ忘れていた。

 CXでここに来て、21年経ち、DUCATIでここにいる。この俺が。。。。
 じっと写真を見ながら信じられないような気持ちが続く。

 新婚旅行の時の写真も探してみた。名鑑は「バイク」と「車」で別々に分類されてお
 り、車編の1988年を紐解く。あー、あったあった。ソアラで北海道をほぼ一周し
 た新婚旅行。うーん、これも若い。2つのアルバムを並べてみた。
■挿絵 
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07282009-album.jpg

 あぁ、そうだ、ちょっと面白いことを思いついた。21年前、15年前、そして「今」
 この3つを1つの物語にしてみよう。
 アルバムから写真を抜き、そして今日とった北海道らしい風力発電の下で撮った写真。
 これらを広いテーブルに立てかけてE-1でちょっとした作品を創作した。
■挿絵 3/21年間 の思い出。
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07282006-history.jpg
 時間が新しいほど鮮明に写ってる。古い記憶はボケてくる。そんなコンプセプト。

【7日目】7月28日(5)

 そんなこんなで1人で思い出に浸っていると「もう1人」の客人がオーナーと共に
 食事を始めた。見た目普通の好青年。まさかと思って聞いて見るとなんとその彼が
 あの汚いハーレーのライダーだった。
 どのくらい汚いかは・・・・百聞は一見にしかず、文章は割愛し写真で紹介する。
■挿絵 ラット系HD 映ってる自分がオーナーである。
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07281953-HD.jpg

 しかしこのライダーは私の想像をはるかに越えた立派なライダー(旅人)だった。
 HDのこの貼り付けてる小物1つ1つが彼自身の記憶であり、彼も日本全国いろい
 ろ巡った実績あるライダーであり、一番感心したのは「カメラは持たず、全ての記
 憶をこの『貼り付け』に集約させている」とのことだ。旅にカメラを持たない主義。
 なかなかできることじゃない。
 だから彼いわく、ラット系(わざと汚れた風なカスタム)でなく、これが自分のス
 タイル、ポリシーだと言うのだ。 おぉ、他に混ざらない、他に例のない強烈な個
 性、これは非常に波長の会うキャラだ。
 彼は彼で「なんですか?あのフェラーリは?(笑)」と尋ねてくる。
 俺は俺でこんな馬鹿見たことないでしょ?と自慢げに話す(笑)。
 オーナーも笑う。
 
 くそ汚い思い出をデコレーションにしたHD乗り。
 普通あり得ないペイントをして九州から下道でここまで来たDUCATI乗り。
 そんなアホ2人しか客がいない今夜の吉里吉里。

 何故か3人は意気投合する。

 21年前、何故この吉里吉里を知ったかその記憶は定かではない。
 でもほんとうにここに出会えてよかったとただただ思い返すのみである。

 22時ごろまで楽しい会話が続いた。
 風力発電は地元では歓迎されていないと言うこと、
 今はバイクブームも去り、経営もなかなか難しいとの話、
 北海道の国道を全部回るなんて奴は初めてで、実に面白いという話、
 二輪魂のURLを吉里吉里のマックのお気に入りに勝手に登録。
 近くに大きなリゾートホテルが出来た話。
 そのホテルに汚いオフロードバイクなどが止まっていると「何しに北海道まで走り
 に来てるのかね?」と3人で不思議がるような話。(吉里吉里に泊まればいいのに)
 オーナーは吉里吉里のホームページを作成中だと言う話。
 いろいろいろいろ話が出る。

 オーナーがいかに人間好きでそして言葉の端々に人間への厳しさも感じられる。
 年齢は私より10ぐらい上だろうか?私は今回この吉里吉里のオーナーと初めてゆ
 っくり話をしたがなんと言うか「生きてる力」を感じさせる人だった。そしてそこ
 に惚れた奥さんだと言うことも見ててわかった。

 あぁ、この人だから吉里吉里はこうなんだ。
 
 寝る時間になった。
 外は凄い濃霧に包まれていた。オーナーもこんな夜は珍しいと言っていた。

 霧と言えば普通気持ちが晴れない沈みがちな情景として受け止められるが何故か今
 日の私にとっては心の中の底から滲み出た大切なものが傷つかないように柔らかく
 包んでくれる甘い綿菓子のような・・・そんな優しいほんのりとしたポタージュの
 暖かさに似た安堵感に包まれるような情景として目に映った。

 安らかに、安らかに、安寧安息、そんな濃霧の羽幌の夜。
 憧れの吉里吉里のベットでなんだかもう今回の旅が終わったような、そんな気さえ
 しながら眠りについた。

■濃霧の夜の羽幌 (寝室の小窓から携帯カメラにて)
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/sasie-07282253-noumu.jpg

8日目 7月29日 最・北・端  へ続く

あ、読者の中には「21年前の忘れ物」の「忘れ物」がこの吉里吉里にあると思って
いた方もおられるかも知れませんが、それはハズレです。私はまだこの時点では忘れ
たままなのです。

 吉里吉里に『忘れ物』など一切ない。『忘れられない物』なら山ほどある。

<続く>