[目次]
序 :今再び
1 :7月22日 野営、謎の発光体に硬直
2 :7月23日 鷹巣国民宿舎、夕陽とのタイムレース
3−1:7月24日 (1)にせりんどう
3−2: (2)短い夜
4 :7月25日 鬼門、秋田へ
5 :7月26日 青函フェリーと雷と停電の夜
6 :7月27日 石狩海岸無料ライダーハウス
7 :7月28日 タイムスリップ
8−1:7月29日 (1)最・北・端
8−2: (2)450号線
9 :7月30日 GPSナビを信じよう
10 :7月31日 ラストスパート500km
★★★ ↓ ここからです ↓ ★★★
11 :8月01日 ミッドナイトエクスプレス 舞鶴〜野営、深夜2時。
12 :8月02日 民宿「翁」
13 :8月03日 21年前の忘れもの
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『11日目:8月1日 ミッドナイトエクスプレス 舞鶴〜野営、深夜2時』
北海道、またここに、またここまで来ることがあるのかな?そんなことも少しだ
け感じはするものの気持ちの大半は「はぁ、やっと船乗れる、帰れる、この船に
乗りさえすればゆっくり寝れる、じっとしていても福井県まで運んでくれる」そ
んな安堵な気持ちだった。
それに船旅ってのは結構好きなんだ。
10時間以上も同じ空間に閉じ込められて「することがない」状況を嫌悪する人
もいるだろうけど私にとっては「することがない」ってこと自体に結構魅力を感
じる。確かに休日はあれもしたい、これもしたい、と思うことは多々あるし、逆
に家ですることがなくじっとしているのはとても落ち着かない。
しかしここは海の上、旅の途中、自由な時間だからこそ「することがない」自
由ををたっぷり味わう旅心と言うのか、そんなものを持っている。
※
車両デッキに乗り込むと船員が「バイクの荷物は全て降ろして下さい」と言う。
ん?そんなこと言われたフェリーは初めてだ。だいたい乗り込む時も普通はバイ
クから入れてそのあとトラック入れて最後に乗用車ってパターンが多いのだがこ
のフェリーはトラック→乗用車→バイクの順番だったのでトラックの運ちゃんは
とっくに一風呂浴びてるのにこっちはまだ船の外だった。
そして今度は「荷を下ろせ」とな。ふ〜ん・・変わったルールなのね。。。
従うしかないが3〜40人いるライダー達は結構苦労してましたね。そりゃぁ〜
綺麗に積んでる積載を解かなければならないんだし。旅を終えて帰路に向かうラ
イダーの積載とか出発当時に比べればそれは悲惨なぐるぐる巻き状態になってる
ことも多い。
けれど私の場合はどれもワンタッチで外せるからそんなに苦労せずテキパキと
バイクを裸にすることが出来た。しかしこの荷物を全て船室まで持っていくのか?
2往復はかかる。そっちの方が大変難儀である。そう思っていたら船員は「荷物
は網棚に乗せて下さい」と言う。ふと見るとバイク用に区切られたこの船底の一
角には壁にしっかりした網棚が設けられていた。ハンモックのように人が寝よう
と思えば寝れるぐらいの網棚だ。物を置いて行くことに少々不安であったが他の
ライダーの様子を見てそこにヘルメットも置いた。
よって手にはサイドバック1つとE−1の入ったタンクバックのみを持って船
底の階層からキャビンに向かう。ふふん、このサイドバック1個に宿泊関係のも
のは全部入ってる。大きな荷物を持ってひぃひぃ階段を上る他のライダーを見な
がら旅慣れてる自分がちょっと嬉しい。なんせこの新造船はビルで言えば6階建
ての階層ほどある大きな船だ。3階分ぐらいは鉄の階段を上った。
自分の部屋は2段ベットが4つある八人部屋。ドアを開けてすぐ左手前の下段が
自分のベットだった。男ばっかりだから(フェリーでは女性専用の部屋もあり、
2等寝室(ごろ寝部屋)でなければ女性も安心して船旅ができる)気兼ねせずバ
タバタと重い装備を脱ぎ、満室でないので誰もいない上のベットにそれらを放り
込む。そして軽装になると一目散に風呂に向かった。船が動き出したあとに風呂
に入ると風呂の湯が大海原のようにたわむので酔うような気分になるのがあまり
好きでないからだ。
熱くて広い風呂で旅の疲れと汚れを落とす。さぁ、今度はビールだ。
喫煙コーナーでゆっくりとビールを飲み、やっと一心地ついた。さぁ、これから
21時間この船の中。21時間は「自分で走らなくていい」なんと嬉しいことか(笑)。
船はいつまにか出航していた。
0時に乗船し、たぶん寝たのは1時過ぎだったと記憶する。
※
朝、波は穏やかだったのか新造船の造りがいいのか揺れも感じず、ゆっくり寝
れた。もちろん「耳栓」はしていたが。旅をするなら耳栓は必須である。今な
ら100円ショップで売ってるから手軽に買えるし安物でも効果は抜群である。
まぁ私の場合、仕事で終電で帰れずカプセルホテルに泊まることが多いので普
段でも耳栓を持ち歩いてるタイプですが。。
朝8時?か9時か。そんな時間にのそのそとベットから這い出る。さて、今日
はまずこの新造船の中の探検だ。(ガキかよ!)
しかしここでちょっと残念なことが。
船内の廊下には長い手すりがあり、昨晩そこに洗ったタオルと縦断中ずっと着て
いた赤いちょっといいメッシュのTシャツを干していたのだがそのTシャツが無
いのである。タオルだけは残ってる。
本来、洗濯物を干すような場所ではないのだが長い廊下のそこかしこに干してあ
ったのでそんなのも「ありなんだ」と思っていて干したのだが・・・無い。無い
ものは無いからしかたないのだがこの船の中に「どろぼう」が居るってことだ。
逃げ場の無い閉鎖空間で人の物を盗むとはいい度胸だ。それに「人の着ていたT
シャツ」が欲しいか?盗むほど?ちょっとイイTシャツではあったが確か「広告
の品」で1980円ぐらいだったぞ。デサントのロゴマークが入っていたがそれが盗
人には盗む動機に至るまで魅力的なロゴだったのだろうか?
・・・ふーむ・・・よくわからん・・・
かすかな望みをかけて念のため総合案内所で「赤いTシャツの落し物はないか?」
と尋ねたが予想通りそんな届はないとのこと。さらに「(手すりに)物を干すの
は(景観上、美観上)して欲しくない」などと小言を言われた。
はぁ、やっぱそうか、干すのは好ましくないんだ。先にそれを知ってれば干さな
かったのになぁ・・・後悔先に立たず。
4000kmを共にしたTシャツが無くなったことでちょっと悲しい、ちょっと悔しい
思いをしたが落ち込むほどのことではない。ちくしょう・・とは思うが今更なが
ら「世の中、悪人はいる」と再認識したわけでこれも旅の社会勉強である。
そうそう、「落し物」で1つ面白いネタがある。総合案内所のカウンターに「忘
れ物BOX」があり、そこにツーリングライダーがよく荷物にくくりつける「旗」
があった。黄色と緑の三角の旗。
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これは北海道のGSでもらえる旗で場所場所によって赤、緑、黄、白?と確か4色
ぐらいあり、この4色を揃えるのも結構難しいらしい。東西南北全部走らないと手
に入らないと吉里吉里で聞いた。その時は(道内全国道制覇に比べれば)たいした
ことはないとあまり興味を持っていなかったがせっかく2色であれ、GSでもらっ
た戦利品を「忘れんなよ!」とツッコミ入れたくなりました。
さて、Tシャツ盗難イベントを終え新造船探検の仕切りなおし。
(続く)
11日目(2)
まずは部屋。こんな配置のベットです。
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外に出ようとしたが「無理」
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ここが風呂
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通路沿いの休憩コーナー、なんかリッチである。
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喫煙コーナーも立派。
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そしてここが私の一番のお気に入りだった場所です。
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航行中はほとんどここで時間を堪能しました。
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ここの窓から見える風景。
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売店
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自販機群
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航行情報ディスプレイ
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一通り探索を終え、昼食のバイキングランチ。たしか千円?だったと思う。
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正直、食いすぎました(笑)
舞鶴(まいづる:福井県(京都の上))に着くのは21時ごろである。あと9時
間。ランチを食べ、夕刻までシグマリオン(miniPC)でせっせとリアル縦断レポ
を書き連ね、船内TV放送でオリンピックの自転車競技に出た競輪選手のドキュ
メント番組が放映されていてそれがなかなか面白くて見入ってしまった。
夕食は食べない。船内は高いし(^^;
陽もとっぷりと暮れたころ、ゆっくりと旅支度を始めた。退屈だったかと聞かれ
れば全然そんなことはない。むしろこのままあと20時間乗り続け九州まで運ん
で欲しいところだ(笑)。
そしてこの船内で唯一自分のためのお土産らしいお土産を買った。黒いメッシュ
の帽子。前頭部に2羽の白いカモメと「Cruising Resort」と刺繍してある。この
船の中でしか手に入らないものだ。しかも1500円と「安い」のが決め手だった。
通勤でも使用しているがもし誰かが「あ、あれは『あかしあ(船の名前)』でし
か買えない帽子だ・・」と気がついてくれてニヤリとしたいアイテムだ。
重い装備を背負い、船底に向かう。 下船待ちの図↓ 20時41分
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/040801up/0801-2030.jpg
※下船
夜だし、写らないインターバルカメラは取り付けない。
こんな時間、寂しいフェリー乗り場を想像していたが外に出るとやけに人が多い。
しかもパトカーやら警官やら。なんなの?と思っていると後方からヒュルヒュル
どーん!と音がする。あら、また花火で歓迎かよ。(二輪魂 第48話「笑う、
らいだぁ」参照)
そんな人ごみの中、フェリーからわらわらと出て、三々五々に散ってゆくバイク
達。あるものはグループで、ある者は勝手知ったる地元民なのか国道に向かわず
真っ暗な路地に入って行く。だんだん私の回りにバイクの姿は見えなくなった。
そして俺、知らない土地に放り出され、しかも夜、さらに1人。こんな時は一番
ソロツーが寂しく不安になる時だ。ここまで「走って来た」ならいざ知らず、い
きなりポン、と降ろされてこの夜の21時からスタートである。当然今夜の宿も
決まっていない。。
30分も走ると国道のくせに車も街灯も民家もないような道になった。でもちょ
っとしたイベントがあって真っ暗な路肩にバイクを止めて写真を撮った。
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/040801up/0801-2130.jpg
37777km。7揃い。
1日目のレポより↓
「家を出た時のオドメーターは33777kmだった。777だ。」
つまりここで丁度4000km走ったことになる。へへ。
さて、それはいいが今夜は?
まぁいいか、とにかく街に出て腹ごしらえしてガスも満タンにしておこう。。。
21時56分
ファミレスでハンバーグを食べる(そんなんばっかり、でもそれがいいからこれで
いいのだ)。地図を見る。しかしさっぱり宿になりそうなポイントがない。もう時
刻は22時。さて、こんな時はどうするか?
答え:ひたすらルート上を進むのみ。
ガスは満タンにした。これで今夜は最低でもあと200kmは走れる。幸い昼の灼
熱地獄の心配はない、この夜は涼しく、なんと走りやすいことか。しかも交通量も
当然少ない。一気にGOALまでの距離の稼ぎ時だ。
寝る場所と言うとぼんやりだが1泊目に野営した「タコ公園」を過ぎたあたりの
国道沿いに何個か道の駅やオートキャンプ場があったのを覚えている。そこら辺ま
で行けばいいかな。と、その程度の思考。
22時30分 ファミレス出発。
ひたすら走る、ノンストップで、安全運転で、たった1人で、ただ黙々と。
黙々と走りつつも実はここで1つの期待があった。
それは21年前、やはり舞鶴で下船し、夜中に鳥取方面に向かっていた。途中山越
えがあったのだがその下りでなんとも幻想的なものを見たんだ。それは自然現象で
なく人工的に、「偶然に」、作られた景観だった。
長い下り、両脇にガードレール、そしてガードレールの上に定期的に設置してある
野球ボール程度の大きさのオレンジ色に光る反射板。とあるポイントにさしかかる
とその反射版が遥か先まで延々と光るのだ。それはまるで宇宙を走る銀河鉄道の線
路のように先へ先へ続く光の道。この真っ暗で民家も街灯もない山道でキャンドル
ライトに両脇を飾られて導かれるように走る山道。思わずクチが半開きになるほど
の美しい景観を見たんだ。21年前に。しっかりと覚えている。
あれは国道だったのだろうか?その時のルートなんて覚えてない。けど、今ここで
もし21年前と同じルートを走っていたら・・・またあの幻想的な山道に出会える
かも知れない・・・・
そして、それは訪れた。この道は21年前と変わってはいなかった。
もう見た瞬間に「あぁ、ここだ・・・」とわかった。こんな風景、そうそうあるも
のじゃない。25年走ってこんな綺麗な夜の道なんて見たこと無い。だから21年
間、忘れなかった。しかもツーリングマップルには絶対に掲載されない「ただの山
道」。夜中にここをこの方向で走って、他に車もバイクもなく、己だけのヘッドラ
イトの明かりだけに反応する反射板の群列に感動する奴しか記憶に残らない。
たぶん私だけの秘密の絶景だ。
光のレールの中を走る、右や左にうねっているが全ての反射板がこちらを向いて歓
迎してくれているようだ。あー・・・・綺麗だ・・・・
時間にして1分程度だろうか。いや、30秒程度かな・・・21年前の記憶が再現
されてとても感動的な時間だった。
※
ファミレスを出て約2時間半。120〜30km走って鳥取県、タコ公園まで
50kmのところまでやってきた、時刻はもう1時を過ぎている。
ふぅ・・・あと1時間走ればタコ公園だ。だが同じ場所で野営するのは安心感は
あるが逆につまらなくもある。それに今夜はもう疲れた。そんな理由でちょっと
良さそうな道の駅を見つけて今夜はここで野営することにした。後で調べたが
「北条公園 道の駅」だった。
http://www.cgr.mlit.go.jp/chiki/doyroj/station/cgi-bin/station_info.pl?param=3103
(続く)
11日目(3)
敷地内の駐車場は野球場ぐらいにとんでもなく広く、自販機の明かりもあるし、
その先には水道の出るトイレもある。そしてなによりもありがたかったのは地元
の農産物でも販売しているのか、駐車場の片隅にテントが設営されたままになっ
ている。これはもう私にとっては「家」である。
翌朝5時に撮った写真を紹介↓
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/040801up/0802-0455.jpg
このテントの中にバイクも入れ、販売用の野菜を並べるための箱に囲まれてコン
クリの上にエアマットをひいて寝床を確保↓
http://www.koa.jp/ducati/Ferrari/Nippon4700km/040801up/0802-0456.jpg
気をつけなければならないのはここで仕事する人が朝何時にやってくるか?であ
る。朝6時には立ち去った方が無難だろう。
着替えて寝る態勢に入ったころには2時を過ぎていた。
寝る前にまた1つ小イベントがあった。
このほとんど闇に近いテントの中、野菜箱の陰に煌々と光る光源を発見し体が一
瞬硬直した。目を凝らしてよく見るとその光源はす〜っと横に流れる。
『また猫かよ!』
第1夜の謎の発光体での経験から今度の硬直は1秒もしなかった。第1夜の時は
光源は「1つ」だったし(たぶん猫の位置で片目しか見えなかったのだろう)、
30秒もずっとその場に定着していたのでまさか生き物とは思えなかった。また、
あの暗闇でなぜにあれほど煌々と光るのか?
獣(けもの)の目が夜光ることなんて知ってるさ。でもそれにしても光すぎ!
まるで目は高輝度LEDライトで体内にオキシライド電池でも内蔵しているよう
に明るかった。
へへ、小さな笑いを一つ溢(こぼ)して寝袋に包まれた。
・
・
・
が、なかなか寝付けない・・・・
虫が刺す、かゆみ止めを塗る、族っぽい車が自販機にやってくる。こちらのバイ
クに気がつきませんように・・と祈る。何かの気配を感じて首を向けるとまた猫
がいる。。。うとうとしてると今度は家族連れの乗用車、ばぁさんをトイレに連
れ出しているようだ。
はぁ・・・やっと2時間ばかりか寝たと思ったころ、今度は「ドロドロドロドロ
ドロ、プッシュー!」と大型トラックがこのテントの目の前でアイドリング停車。
ええ?もう野菜の配達に着たのか?と箱の陰から顔だけ覗かせて様子を伺うがド
ライバーは降りてくる気配も無い。休憩中?
この広い駐車場でなんでここで?・・・な、泣きたい・・あぁ、時刻はもう4時。
トラックは30分以上もそこに止まっていた。その間、寝れず。
そうこうしていると夜が白々と明けて来た。
あー・・こうなるともうダメだ。今から寝なおす気分にもなれない。やっぱ野宿
はきっついなぁ・・・なんて思いつつ諦めてトホホ気分で出発の準備を始めた。
そうだ、今から走れば『今日中に家に帰れる』。
うん、それもいい。もう十分だ。もう十分。野宿もした、このDUCAで縦断した。
1年分走った。堪能した。帰ろう、もう帰ろう。。って言うか「帰りたい」。
この旅、最後の野宿か・・・最後なら、と、湯を沸かしてインスタントコーヒー
を飲む。自販機の前の数段ある階段に腰掛けてゆっくり飲む。誰も居ない道の駅
で。たった1人で。これは何度体験してもいいものである。至高の時間だ。
しかし空を見ると雲行きが怪しい。風は強く、そう言えば夜中もテントに落ちる
雨音を聞いた。降るのかな・・・
結局4時半にはこの旅最後の野営地である道の駅を後にした。
ガスはまだある。しかし太陽が昇るにつれていかに今日の天候が「怪しい」かは
っきりしてきた。雲が速く、そして低い。
30分ほど今にも降りだしそうな雲と風の中を走っていると案の定雨がやってき
た。しかもいきなり大きな雨粒で降って来た。
ちぃーーーっ!と、シャアが「連邦のモビルスーツは化け物か!」と言うセリフ
の前の「ちぃーーーっ!」と同じ口調でメットの中で声を出しながら目の前のコ
ンビニに緊急退避。
どんどん強くなる雨、しかも結構冷たく、体が冷える。目の前の海岸線の狭い国
道は市内に向かう通勤時間なのか渋滞も発生していて目に見える範囲は車が数珠
繋ぎ状態。こんな雨の中、とてもそんな道に出たくもない。30分もコンビニの
軒下で佇(たたず)んでいた。
座るほどのスペースもないコンビニの軒下で寝不足のせいもあり雨宿りもたいそ
うキツイ。
ホット缶コーヒーを飲みながら、
だめだ・・・今日は家まで帰れないな・・・そう覚悟した。九州まで400km
程度ではあるもののこの雨の中高速に乗って、・・・無理は危険だ・・・
うん、急いで帰る必要はない、今までの11日間で温存していた「予備日」も使
ってない。こんな時のための「予備日」だろう?帰還までの余裕は十分ある。
そうだ!・・・翁(ネットを通じて知り合った島根に住んでるDUCATI仲間、ハン
ドルネームは「テリー」だが、私は1つ年上のその彼をその大柄な風貌と人柄か
ら「おきな」と勝手に呼んでいる、彼との交流が始まってもう3年になるだろう
か?何度も会った仲である)は居るかな?ここから確か国道沿いに西に走れば彼
の「店」がある。今日は月曜日、理容室(翁の店)って月曜は店休日じゃないの
か?
そう思うや否やその場でポケットからシグマリオンを取り出し、AirH"(通信カー
ド)を挿して翁のサイトへ飛んだ。(21年前のツーじゃ考えられない電子装備
と時代の流れ)
おお!ラッキ!やっぱ月曜休みじゃないか!♪
時間は朝6時半、そう言えば翁って早起きだったよな?そう思って遠慮しがちな
がらもmailしてみた。すると3分もしないであっという間に返信が来て電話した。
「おー、何やっとる?今どこね?」
翁の響きのよい声が飛び込んできた。彼は私が縦断中のことも当然知っている。
早速事情を説明し、いきなりでなんだが今日、そっちに泊めてもらえるか?と頼
むと快諾してくれた。私は泊まったことはないが元々翁はネット仲間をよく泊め
てくれることで「民宿翁」と私は勝手に呼んでいた。けれども当日飛び込みの客
は珍しいだろう。
9時に民宿翁の近くの国道沿いの大型スーパーで待ち合わせることにした。
よかった・・・とにかく今日はもうそこで終点。合羽をしっかり着て結構な雨の
中、待ち合わせ場所に向かうことにした。
『12日目:8月2日 民宿「翁」』 に続く